「宵越しの金は持たない」というのは江戸っ子の気質をあらわした言葉だ。
その日に儲けた金銭をその日に使ってしまい、金銭に執着しないことが「粋」とされた。
今からすれば計画性もない無謀な考え方だと思われるだろう。だが、「物事に執着しない」と捉えたとするなら何だか現代にむしろ必要なことではないかと思えてくる。
かつて江戸の街は災害が多かった。特に大火災が度々発生して甚大な被害をもたらした。だがそのたびに復興して元の活気を取り戻してきた。そんななかで、物事に執着しない気質が身に着いたのだろう。
災害で失うかもしれないのなら初めから持たないほうがいい、執着しても仕方ない、と。
今はどうだろう。
科学や技術が江戸時代とは比較にならないほど発展し豊かになった。だが相変わらず自然災害は発生し、甚大な被害を出している。
近頃は「前代未聞」や「前例のない」といった言葉を頻繁に目にするようになっている。気温が40度近い日が続いたり、局地的な大雨が洪水を引き起こしている。
常に災害と隣り合わせであることは江戸時代となんら変わらない。
だからこそ物事に執着しない生き方に見習うところがあるのではないか。
執着しているものって何だろう。
お金?仕事?人間関係?含み損の持株?SNSのアクセス数?
必要以上に執着しているものはないか。執着を捨てることで好転することはないか。
最近、災害が多くてしかも被害が大きいのを目の当たりにしてこんなことを思った。