塩野七生氏の著書「ローマ人の物語」でユリウス・カエサルの言葉が以下のように紹介されている。
「人間ならば誰にでも、現実のすべてが見えるわけではない。多くの人は、見たいと欲する現実しか見ていない」
今の世の中はまさにこの言葉の通りになっている気がする。
今の日本で多くの人が「見たいと欲する現実」とは何か。
それは、積極財政による経済成長を実現し、消費税を減税することだ。これを極端に言い換えれば「給付金をよこせ、税金を減らせ、それを邪魔する財務省をぶっ壊せ」ということなのだろう。それによってバラ色の未来がやってくるとまではさすがに思っていないのだろうが、少なくとも悲惨な現在よりはましになるに違いないと信じている。現金がもらえて税金が減るのはうれしいし、それを邪魔する連中のほうがおかしい、というわけだ。
そして今度の衆院選挙によってそういう「見たいと欲する現実」が実現に近づくというわけだ。株式市場はまさに見たいと欲している現実になることに興奮しているかのようだ。ほとんどの野党は消費税減税か廃止を訴え、自民党もついに消費税減税へと傾き始めた。
こうやって世の中の流れが自然とつくられていく。
もし、本当に見たいと欲する現実になったらこの人たちは狂喜乱舞するのだろう。
でも一方で、できることならずっと目を背けていたい現実も存在していることを忘れてはいけない。世の中は都合のいいことばかりでできていない。
見たいと欲する現実になるということは、同時に見たくない現実を否応なく見せつけられるということでもあるのではないか。
その時こう思うことになる。
「こんなはずじゃなかった」
世の中はどう動き、本質は何かを考え続けること。
そして誰も見たがらない現実を冷徹に見ようとすることは投資をする上でも重要だと思っている。多くの人が見ているものを見ようとせず、別の見方をできるかどうか。それが投資チャンスを見出すことにつながる。