今日の日経新聞電子版の記事で、一時的な消費税減税の是非について経済学者に聞いた調査が興味深い。
この調査で消費税減税は「適切でない」との回答が85%を占めたという。その理由として、財政状況が悪化する、一時的な減税が恒久化する懸念がある、物価高対策としての有効性を疑問視する、といったことが挙げられている。
これに対して一般の世論は消費税の減税を望んでいる。選挙を目前に控えた政治家もそれに媚びようとしている。
一般世論も政治家も将来の利益を考えることなく目の前の欲求を満たそうとしている。こうした状況の中で、専門家の意見は隅に追いやられることになるのだろうか。
ここで「マシュマロ実験」を思い出した。
「マシュマロ実験」とは、子供時代の自制心が将来の社会的成功と関連があるかを調査した実験だ。
机と椅子しかない部屋に通された子供は、椅子に座るようにいわれる。机の上には皿がありマシュマロが1個載っている。子供は部屋に1人残されて、マシュマロを15分間食べないで我慢したらマシュマロをもう1個あげるという約束をする。
部屋に1人残された子供は、マシュマロを食べたい誘惑と戦うことになる。最後まで我慢して2個目のマシュマロを手にした子供は1/3だった。
その後の追跡調査でマシュマロを食べてしまったグループと我慢できたグループでは我慢できたグループのほうが社会的に優秀とされ評価が高かったという。子供のころから自制心があると大人になって成功する可能性が高いというわけだ。
ただ、この実験の最新の検証では、2個目のマシュマロを手に入れたかどうかは被験者が経済的に恵まれていたかどうかが重要だったらしい。
貧しい家庭の子供は「今日食べ物があっても明日はないかもしれない」という可能性が常にあり、一方裕福な家庭の子供はそういった心配がないため喜びを先延ばしすることが可能だという。
蓄えがなく崖っぷちの経済状態だったらまずは目先のことに集中してしまうだろうし、余裕があればあるほど長期的な視野で物事を見ることができる。
将来のために自制することができず目の前の欲求を追求してしまうのは、余裕が失われているからだ。だからといって目の前の欲求に安易に飛びついていいという理由にはならない。将来はもっと状況が悪化することで苦しむことになりかねない。
余裕を失った有権者は、どういう政治家を選ぶのだろう。
今度の選挙は壮大な「マシュマロ実験」なのかもしれない。