どうやら日米の関税交渉は難しい局面に入りそうだ。トランプ大統領は交渉がまとまらなければ関税引き上げも示唆した。交渉の窓口である赤沢経財相は交渉相手であるベッセント財務長官に会うこともできず帰国している。米国は日本との交渉を後回しにして、先にインドとの交渉に集中するらしい。
こうした状況は日本側に不利のように見えるが、案外米国も焦りがあるのかもしれない。米国としては日本と比較的容易に合意できると踏んでいたものの、意外に日本側が強硬で譲らないことにいら立っているのだろう。
日本側が安易に妥協せず粘り強く交渉する姿勢はいい。だがもうちょっと米国側の要求を受け入れる余地はあったのではないか。トランプ氏が「コメ不足なのに米国産受け取らない」と批判したが、米国産コメの輸入はまさに考える余地があったのではないか。
これはおそらく国内の農林族議員を中心とした反対勢力があったからなのだろう。そのために日本経済を支えてきた自動車産業が窮地に陥る一方で、規制に守られ生産性の低い業界が生き残ることになるが、これが政府のいう国益というわけだ。
日本の自動車産業はこれまで何度も苦境に立たされながらもそれを乗り越えてここまできた。まさに「艱難汝を玉にす」という言葉通りだ。困難や苦労を乗り越えてきたからこそ今の地位がある。規制に守られているのに衰退していくばかりの農業とは雲泥の差だ。
もし日米の関税交渉が決裂して、高関税を課されることになれば大きな打撃となるだろう。だが一方で、困難を克服しようとする過程がさらなる成長と強さを得ることにつながるのではないか。
日本企業にはもはや高関税を受けて立つぐらいの覚悟がいるのかもしれない。むろん淘汰されてしまう企業は出てくるだろう。でも生き残った企業はかなり強靭となるはずだ。投資家としてもこうした企業を応援したい。