また「新しい資本主義」に関連して首をかしげるようなことが出てきた。
政府は環境問題や貧困など、社会的な課題の解決を事業の目的とする新たな会社形態の設立に向けた検討に入るらしい。短期の利益追求への偏りを修正し、公益を担いながら成長する企業を育てるという。
公益を担う企業?
NPO法人ではだめなのか?
公益を担いながら成長する企業?
そんな企業に成長性は期待できるのか?
企業の本業そのものが成長することで社会の貢献につながることこそ望ましい姿だ。だが公益重視によって利益が上がらず株主への還元が少ない会社に投資するだろうか。株式会社は営利を求めるからこそ資本主義の要なのであって、営利があるからこそ資金が集まり持続的に成長できるのだ。
新しい会社形態を作ったところで普及するとは思えない。資本主義の形を取りながら資本主義的なことを弱めているという矛盾を抱えた中途半端な存在だからだ。
企業が短期的な利益追求に偏っているというが、本当にそうなのか。
確かにアクティビストと呼ばれる株主が経営者に株主還元を迫るということはある。
だがそれは経営陣が長期的な視点から効果的な事業投資を行わないにもかかわらず、手許にだぶついた資金を株主に還元しようとしないからではないのか。
企業は長期的な視野で事業投資するのが普通なのだ。目先のことばかり気にしている企業はいずれ衰退し滅んでいく一方で新しい企業が生まれてくる。そうやって新陳代謝していくことで経済の活力が生まれる。
不特定多数の株主から厳しい要求をされたくないのなら株式上場しなければいい。言い換えれば、株式上場しているからには経営陣は株主からの要求に応えなければならない。株主の要求が不当と思うならば経営陣は毅然とした長期的ビジョンを示して株主を説得すべきなのだ。
だが多くの経営陣はそれをせずにESGだの公益だの社会貢献などを持ち出して収益性の低さを正当化しようとしているのではないのか。
やはり「新しい資本主義」というのはなんかズレている。
今でさえ社会主義的な色合いがあるにもかかわらず、さらに濃くするつもりのようだ。