日本の株式市場で急落があった後、相場は戻りつつある。それを支えているのが企業による自社株買いらしい。
自社株買いをすることで自己資本が減少しROEが改善することになる。また、自社株買いをすることによって投資家に対し自社の株価が実態より割安であることを示すメッセージにもなる。
株価が急落したときは割安度が高くなることから自社株を安く買い戻せるとともに株価を適正方向へ導くので株主からは歓迎される。
株価を意識した経営が要請されていることもあって、自社株買いは配当とともに株主還元策として増加している。このこと自体は別に悪いことではない。
だがよくよく考えてみれば、株式市場というのは株式発行によって資金を調達する場のはずだ。にもかかわらず、資金調達のための増資で新株発行となると希薄化懸念で株価が下落してしまうので、増資自体が嫌われてしまっている。
逆に配当や自社株買いなどの株主還元が盛んに行われ、株式市場から資金が流出していくようになっている。またMBOなどで自ら株式市場を去る企業も増えている。
株式市場が資金調達の場ではなく、株主還元の場になっているのではないか。
むろん新規上場の企業は増えているから資金調達の場として株式市場が機能していないわけではない。
だが上場後に資金調達する必要がないということは、それだけの資金を投ずる機会がないということでもある。必然的に株式市場の機能も低下してしまう。株式投資が広まらないのはこうした背景があるからなのかもしれない。