かつて経済学を学んだ時、「合成の誤謬」という言葉を知った。
合成の誤謬とは、個々のレベルで正しい行動をしていても、それらが合成した全体で見ると想定と逆の思わぬ結果を招いてしまう現象をいう。
例えば、個人が貯蓄や倹約に励んだら経済全体が縮小して不景気になり、結局貯蓄を取り崩さなくてはならなくなるといったようなことだ。
株式投資の世界でもこの合成の誤謬が起きるのではないかと思っている。
新NISAが始まって株式投資に関心が集まり、何に投資するかについてはオルカン一択といっていいくらいになっている。
確かに個人レベルでは全世界の株式に連動するインデックスに投資することが最も合理的とされる。だが、誰もかれもがオルカンに向かってしまうことでその規模が大きくなり過ぎると、株式市場全体からすれば歪んだ存在となり本来の本質的な価値よりも割高になる。この歪んだ状態はいずれ解消するように働くはずであり、本来の妥当な価格まで下落することになる。この下落に直面して耐えられなくなった投資家が株式市場から逃げ出し、それがさらなる下落をもたらす。インデックス投資という合理的な方法で儲かるはずだったのに、結局損失を被ることになった人が続出することになるかもしれない。
相場の有名な格言に、
「人の行く 裏に道あり 花の山 いずれを行くも 散らぬ間に行け」
というのがある。
他人と同じことをしていては利益を得られない。
むしろ他人と逆の行動をとること。しかもすみやかに。
みんながインデックス投資へと向かう中では個別株投資が有利な局面がくると私は考えている。
みんなと同じであることに安心するのか。
それともみんな同じであることに気味悪さを感じるか。
これは性格も影響するだろうし、ケースバイケースだ。
私はインデックス偏重に気味悪さを感じている。
投資も経済の一部である以上、複雑怪奇なものであって一筋縄ではいかないものだ。
「合成の誤謬」という言葉がそれを物語っており、そこにチャンスが眠っている。