自動車大手で国の認証手続きを巡る不正が発覚した。そこにトヨタも含まれていることが事態を一層深刻なものとしている。
日本企業は品質にこだわりを持っている。トヨタも例外ではなく、そうした姿勢が世界中でメード・イン・ジャパンというブランドイメージを築き上げてきた。
今回明らかになった不正も、もともとは法規より厳しい品質基準を定めていたところで起きていて、不正があったとしてもそれをもって品質を満たしていないことにはならないところが問題を複雑にしている。
市場で求められる品質が法規で定められているものよりも厳しければ、企業としては法規以上の品質を求めるはずだ。だからこそ現場は品質向上の努力をしていたが、一方でその品質への自負が法規手続きを軽視することへつながったのだろう。
消費者としては製品の品質が高ければ高いほどいいわけだが、その水準があまりにも高すぎると製品を作る側へのプレッシャーにもなり、それが不正へとつながりうる。消費者が必要十分以上の品質を求めていないかも考える必要があるのかもしれない。
投資家の視点からはどう考えればいいのだろう。
トヨタという優良企業ですら法規を守る意識が薄らいでいたのなら、日本企業を見る目は厳しくなるだろう。ただ、トヨタは日本を代表する企業だが、同時に日本の伝統的企業(ジャパニーズ・トラディショナル・カンパニー、JTC)でもある。
最近明らかになる不正の多くはこのJTCで起きている。
JTCと揶揄される企業でも変化しようとする動きはある。不正が明らかになった企業もその後どう変化するかが問われる。投資という観点からは、そうした変化をじっくり見定めていきたい。