投資狂日記

自由を追求するブログ

資本コストと株式益回り

東京証券取引所が要請した「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」によって、各企業は資本効率の改善に動き出している。投資家としてもこうした動きに反応して、改革の成果がありそうな企業を投資候補として見つけ出したいところだ。

 

問題は資本コストをどうとらえるかだ。資本コストは投資家の期待収益率でもある。資本コストの算定について理論的にごちゃごや考えるよりもっと手軽に把握することはできないかと思ううち、「株式益回り」という指標に注目した。

 

株式益回りとは、PER(株価収益率)の逆数だ。PERを別の角度から見たものでもあり、株価と1株当たり利益を比較するので本質的には同じだ。つまり、企業の1年間の1株当たり利益が、その株価の何%を稼ぐか、ということだ。PERが20倍だったら5%の株式益回りということになる。

 

考えてみれば、この株式益回りこそが資本コストそのそものとまでは言わないが、かなり近い水準といえるのではないか。市場で株価がついているということは、その株価が投資家の求める利回りの水準といえる。調べてみると、理屈のうえでも成長率を加味しなければ株式益回りは資本コストに収斂するという関係にあるらしい。

どうせ正確な資本コストなどわからないのだから、ザックリと把握できればそれで充分だ。

 

それで株式益回りをアンカーとしてROEと比較するのだ。理屈ではROEが資本コストを上回れば企業価値が増加することになる。つまり、乱暴にいえばROEが株式益回りを上回ればいい。この株式益回りとROEの差がPBRで表されるわけだ。

 

ただ、ここでROEにも注意しないといけない。ROEは毎年の企業利益に左右される。企業利益が毎年大きく増減するようだとROEも乱高下することになる。また自社株買いや借入金の増加などで高ROEとなっているだけの場合もあるので、ROEの推移状況もチェックする必要がある。

 

割安度を測る目安としてPERが用いられるが、PERが10倍以下ということは株式益回りが10%以上ということだ。ということは資本コストも同じくらいの水準にあるということでもあり、それを超えるROEを実現しないと企業価値が増えていかない。そういう高いROEを維持できる企業となるとかなり限られてしまうだろう。PERが低く割安だからといって安易に手を出すと、いつまでたっても株価が上昇しないということになりかねない。現に日本株の低いPBRが問題にされたのもそのためだ。

 

では逆に、株式益回りが低い、つまり株価が高い企業というのは資本コストが低いといえるのか。そうだとするとROEの水準も低くていいということなのか。

このあたり考える余地はまだまだあるものの、興味深いことは確かだ。