通常、金利が上昇すると株価が下落するといわれている。
それはなぜなのか。また、現実で本当にそうなっているのだろうか。
マクロ的な視点からはそうかもしれないが、ミクロ視点では案外そうではないことも多いのではないのか。
金利と株価の関係について私は少し疑念を持っている。
株価については以下の数式で表される。
株価=PER×1株当たり利益(EPS)
すなわち、株価はPERかEPSが変化することによって動くことになる。そして金利の変動はPERとEPSの両方に影響を与えうる。すなわち、金利の変化が株式市場での評価と企業の業績を変化させうるわけだ。
金利が上昇すると、企業は借入コストが上昇し設備投資の縮小へつながる。すると業績拡大にブレーキがかかり利益の減少へとつながるおそれがある。そしてEPSの減少が想定されれば株価の低下となって表れることになる。
また、金利上昇が起きると、金利と株式益利回り(PERの逆数、1株当たり利益÷株価)との差が拡がり、特にPERが高いグロース株の投資魅力が低下する。それがPERの低下を招き株価を下落させることになる。
これらが一般的に説明される金利と株価の関係だ。
だが、本当にそうなのか。
金利が企業業績に与える影響は、それこそ企業によって違うはずだ。有利子負債が多い企業と無借金企業で同じはずがない。また、設備投資などの事業拡大に必ず借入れをするわけでもない。利益率が高く営業キャッシュフローを潤沢に稼げる企業は、借り入れなどせずに事業拡大へ資金を投入できるからだ。そういう企業にとっては金利の変動に直接的な影響はない。だとすれば、EPSの減少が想定されることによる株価の下落は起きにくいはずだ。ただ金利上昇で景気が悪化すれば、EPSが減少することは当然ありうる。
また、金利上昇がPERを低下させるというが、そもそもその金利というのはどの金利を意味しているのだろう。米国の金利なのか日本の金利なのか、長期金利なのか短期金利なのか。どの金利を想定しているかで投資家の期待収益率(割引率)も異なってくるし、それによってPERの水準も違ってくる。
金利が上昇すると株価が下落するというのは一般的に言われることであり、個別的に考えてみれば金利の影響が少ない企業も存在するはずだ。ということは、金利変動の直接的な影響を受けないにもかかわらず、一般論によって株価が下落してしまったとしたらそこにギャップが生まれることになる。このギャップを見つけることができれば、絶好の投資機会になるのではなかろうか。
グロース株といわれる銘柄は苦戦しているが、この中には不当に評価が低い銘柄も混じっているかもしれない。そして好調なバリュー株の中には過大評価のものが混じっているかもしれない。
これは私の独りよがりの妄想にすぎない。
でも杓子定規に物事をみていると視野が狭くなる。まずは何事も「本当にそうか?」と疑ってみることだ。
そこから投資機会が生まれてくると思っている。