福島第一原発の処理水放出を巡って様々な反応がある。
中国の反応は、処理水の安全性の是非というよりも別の側面、すなわち台湾問題などでの米中関係の悪化が関係しているとみたほうがいい。
韓国で反対しているのは野党関係の人々で、そもそも対日批判することが目的みたいなところがあり、同時に日本との関係強化を目指す大統領と与党を批判したいのだろう。
こういう別の思惑が背景にある中、処理水への不安と混じって拡散し過剰な反応となってあらわれる。
そもそも不安はどこから来ているのか。
不安は「わからないこと」があるから起きる。
トリチウムという放射性物質についてほとんどの人は知らない。だが放射性物質、放射能は怖いということは知っていて、その怖いものが海中に放出され魚を食べることで体内に取り込まれたらどうなるのだろうと「わからないこと」で不安になるわけだ。
わからないことで不安になるなら、わかろうとしてみればいい。
そもそもトリチウムとはどういう物質なのか。
トリチウムとは、日本語で「三重水素」と呼ばれる水素の放射性同位体だ。同位体というのは、原子番号が等しく質量数が異なる元素(原子核の陽子数が同じで、中性子数が異なる元素)をいう。つまり、トリチウムは水素の親戚みたいなものだ。トリチウムは水分子の一部となって存在しているため、そもそも水から分離すること自体が困難なわけだ。また、トリチウムは大気中の水蒸気・海水・雨水・水道水など自然に存在している。
そしてトリチウムは放射線の一種であるβ線を出しているが、そのエネルギーは極めて小さく、紙一枚で遮ることができるほどだという。そしてトリチウムの生物学的半減期(放射性物質の量が半分になる期間)は10日で、体内に取り込まれたとしても速やかに排出され、臓器に蓄積することもない。
私は化学や物理について詳しいわけではない。でも、これくらいのことはネットで簡単に調べられる。
これでわかることは、トリチウムというのは放射性物質だけれども、その放射線は極めて弱く、その害はほぼ無視できるほどのものだということだ。そのトリチウムを海水でさらに薄めたうえで海中に放出するのだから、影響はほぼないに等しい。
こうした調べればわかることを知ろうともせず、ただ騒ぎ立てる人々がいる。
さらには嫌がらせする人すらいる。
不安につけこむこうした人々になるか、こうした人々を冷ややかな目で見つめる側になるか。
不安への対応でその人の姿勢がわかるだろう。