投資狂日記

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定額減税と暗黙のインフレ税

もうすぐ岸田首相肝いりの定額減税が始まる。

こういう政策を実行しようとするとき、おそらく実務的な負担というものに気づいていないのだろう。

 

今回の定額減税は、所得税と住民税で徴収の計算方法が異なり実務的にかなり手間がかかりそうだ。しかも永続的なものではなく今回限りのことだから尚更面倒くさい。

 

所得税は令和6年6月給与における源泉徴収税額から定額減税額が控除される。控除しきれない金額は次回の給与に繰り越されて、令和6年中に支払われる給与で源泉徴収される所得税等の額から順次控除されるので、従業員ごとにその繰越額を管理しないといけなくなる。

また、住民税は令和6年6月分給与では特別徴収(天引き)が行われず、定額減税後の住民税の額を11分割して、令和6年7月分~令和7年5月分の給与で特別徴収が行われることになる。これは徴収する自治体もかなり面倒に違いない。

 

面倒なことをわかっているのか、国税庁は定額減税の特設サイトを設けていて情報提供をしている。地方自治体も対応せねばならず、また民間事業者もシステム変更など手間とコストがかかることになる。

こうした実務的負担によって減税の効果は相殺されてしまうのではないか。たかだか数万円の減税を首相の思い付きでするだけでこれほどの実務負担を押し付けられては実務担当者もたまったものではない。

 

しかも政府は表向きに減税しておきながら、インフレ税という暗黙の負担を国民に押し付けている。インフレ税とはインフレによって国民から政府へ購買力が移転していく現象で実質的に増税と同じような効果になる。インフレになればなるほど政府の膨大な借金の返済負担が軽くなるわけだ。

岸田首相は「増税メガネ」と揶揄されることを嫌い定額減税を実施したが、インフレ税という目に見えない増税を暗黙のうちに進めていることに気づいていない。いや、気づいていないフリをしているのか。

 

今は定額減税に向けた実務担当者の溜息で済むかもしれないが、やがて国民多数の溜息になり、それが怒りに変化していくことになるかもしれない。