「名伯楽」という言葉がある。優れた資質を持った人を見抜いて成長させる人物のことを意味するが、この伯楽についての故事が「韓非子」に記されていて、そのエピソードが興味深い。
伯楽は馬の鑑定名人で、誰もが名馬の見分け方を知りたがった。そこで伯楽は嫌いな相手に名馬の鑑定法を教え、気に入った相手には駄馬の鑑定法を教えたという。
普通は気に入った相手に名馬の見分け方を教えるものだと思うが、伯楽は全く逆だった。それはなぜか。
名馬はめったに現れるものではないからその見分け方もあまり役に立たない。ところが駄馬というと毎日のように売買されるから駄馬の見分け方のほうが役に立つという。
これを株式投資にあてはめてみると、優れた企業を見分けるよりダメな企業を見分けることのほうが役に立つということだろうか。たしかにまずは大きな失敗で資金を失わないようにダメ企業に投資しないことは重要だ。ダメ企業を避けるだけでもその効果は大きい。
伯楽のエピソードはここで終わる。だが私が思うに、駄馬の見分け方が身についたらやはり名馬の見分け方も身につけようとすべきではないのか。順番としてまずは駄馬を見分け、次に名馬を見極められるようになる。名馬も駄馬も見分けられるからこそ伯楽は馬の鑑定名人となったのだ。
伯楽ほどのレベルに到達することは難しいことだろうが、投資家として一つの理想像ではないかと思う。