企業のガバナンスに関連する事件が多発している。
ビッグモーターによって世間は中古車業界へ厳しい目を向けるようになり、同業のネクステージにも疑惑が浮上した。
そしてビッグモーターの不正を知りながらも取引継続の判断をした損保ジャパンの社長が辞任に追い込まれた。
ジャニーズ事務所は経営陣を刷新したものの、社名も株主も変わらないことからその姿勢に疑問があり、所属タレントの起用を避ける動きが出てきている。
企業のガバナンス不全は世間からの信用を失わせる。
そして信用を失うことは企業の存続すら危うくする。
いくら業績が良かったとしても、人気があったとしても、信用を失えばすべてが崩れる。
株式投資で銘柄選びをしているとどうしても業績やその業績を伸ばしそうな事柄に注目してしまう。
でも実は最も重要なのは信用を積み上げられているかどうかなのではないか。
たとえ売上が伸びていたとしても、それが不正によるものだった場合、信用を削ることで生まれた売上なのだ。だからひとたび不正が明らかになれば、削られた信用という形で表面化し、結局は企業の存続を危うくする。
だからこういう企業に投資することは危険なのだ。
長い目でみれば、信用を積み上げ続ける企業こそ投資家にも利益をもたらす。
信用を削るような企業ではなく、信用を積み上げていく企業を選ばないといけないのだ。
企業はホームページなどで立派な経営理念を掲げている。
例えば、ビッグモーターの不正に絡んだ損保ジャパンのホームページには「お客さま本位の業務運営方針」が掲載されていて、こう書かれている。
”SOMPOグループは「お客さまの視点ですべての価値判断を行い、保険を基盤としてさらに幅広い事業活動を通じ、お客さまの安心・安全・健康に資する最高品質のサービスをご提供し、社会に貢献します。」という経営理念を掲げています。”
だが実際は、顧客の視点ですべての価値判断を行うことをせず、逆に売上確保のために顧客の信用を損なったのだ。
結局のところ、損保ジャパンにとって経営理念というのは形式的で表面をよく見せるための方便でしかないと思われても仕方ないだろう。
損保ジャパンに限らず、経営理念が単なるきれいごとの形式的標語でしかない企業のほうが圧倒的に多いのではないか。
でも、愚直に経営理念を実践する企業がないわけではない。
本当はそういう企業こそ投資に値するし、投資家だけでなく社会に利益をもたらしてくれる。
投資家はそういう企業を見分けられるよう努力しないといけないと思う。