株式投資で重視する指標は何かと問われたら、私はROEと自己資本比率と答える。数年前もブログで書いていたが、今でもそれは変わらない。
ROE(Return On Equity)とは自己資本利益率のことで、自己資本すなわち株主の投資額に比してどれだけ効率的に利益を獲得したかを示す指標だ。この値が高いほどその企業は効率的に利益を生み出していることを表している。
もう一つ、自己資本比率とは、総資本のうち自己資本が占める割合を示す指標だ。総資本は他人資本と自己資本の合計で、他人資本というのは銀行などからの借入金や社債をはじめ買掛金や未払金などいずれ返済が必要となるものであるのに対し、自己資本は株主からの出資金と過去から累積した利益で構成され原則として返済する必要がないものだ。自己資本比率が高いということは返済義務のある他人資本が少ないことから財務的な安全性が高いということになる。
しばしば日本企業のROEは低いと言われている。ROEは高い方がいいのは確かだが、高ければいいわけでもない。ROEにも質というのがあって、それを見分けないと意味がないと思っている。
ROEは、当期純利益 / 自己資本 という計算式だが、これは以下のように分解できる。
ROE= 当期純利益 / 売上高 × 売上高 / 総資産 × 総資産 / 自己資本
=売上高利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ
ROEを高くするにはいずれかの要素を高くすればいい。利益率を高めるか、回転率を高めるか、財務レバレッジを高めればいい。ここで注意すべきが財務レバレッジだ。財務レバレッジは、総資産 / 自己資本 という計算式で、これは自己資本比率の逆数だ。財務レバレッジを高くするということは他人資本を増やし自己資本を減らすということで、自己資本比率を下げることでもある。極端にいえば借金を増やすことで財務レバレッジを高めればROEも上昇することになる。
ROEが高くても、その中には財務レバレッジが高いことでROEが高くなっているものがあり、その場合は利益率や回転率が高くないこともありえる。こういう高ROEは見かけのうえであって、私は「質が低い高ROE」だと思っている。だから財務レバレッジに注目し、そのために自己資本比率を見る。ROEが高くても自己資本比率が低い企業には要注意なのだ。
ROEが高く、なおかつ自己資本比率が高いということは、利益率が高いか回転率が高いということになる。どちらも高いのであればなおいい。利益率や回転率が高いということは、そのビジネスモデルがうまくいっているということであり、まさに本当の意味で効率的だといえる。
ROEが高ければ、それだけ利益が蓄積されるのも早くなる。利益が積み上がることで自己資本はどんどん増えていく。自己資本が増えれば1株あたり純資産も増えることになり、これが株価の上昇につながっていくわけだ。ただ、自己資本が増えるということはROEを低下させる圧力になる。だから利益率や回転率が維持されてROEが継続的に高いままであるかチェックし続ける必要がある。
実のところ、ROEと自己資本比率に着目するだけでも財務的分析はほぼ十分ではないかと思っている。ROEと自己資本比率を用いれば、利益率や回転率の高さといったその企業の本質的な強さも垣間見ることができるからだ。いちいち細かな財務分析をしてもたいした差はなく、投資家にとっても効率的だと思う。