少し前に『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』(講談社+α新書)というベストセラーの本があった。
サラリーマンの雇用環境は厳しさを増し、副業が広まったりする中でサラリーマンの間では不動産投資に注目する人も多かったが、さらに進んで「会社を買う」という手法を示したインパクトはなかなかのものがあった。
たしかに中小零細企業は後継者不足などで廃業を検討することが増えている。さらに新型コロナウイルスによる影響で業績が落ち込み、特に飲食業は今後存続の危機に直面する事業者が増大するだろう。
もし、「300万円で会社を買ってください。」と言われたらどうするだろうか。
初めから相手にしない人もいるだろうが、検討してみる人もいるだろう。
儲かるのか、すなわち利益がでるのか?
売上はどれぐらい?
家賃・光熱費はどれくらい?
人件費は?
そもそも事業に将来性はあるのか?
採算が取れるにはどれくらいの粗利が必要なのか。そのためには客単価と客数はどれくらいで、材料費などの原価はどれくらいにするか、などなど検討する項目は多い。
このように、「会社を買う」にあたってはその事業について調べる必要があり、ハードルが高いように思える。だが「会社を買う」というのはオーナーになるということでもあり、株式市場で「株を買う」ことと本質的に同じだ。会社を丸ごと買うか部分的に買うかの違いでしかない。違うのは自分自身で経営をするかどうかだろう。自分で経営するとなるとハードルは高くなるし、リスクも高くなる。
ならば300万円で上場企業の株式を買ったっていい。自分なりに上場企業について調べたうえで株式を買う、すなわち「会社を買う」のだ。すると企業価値というものを意識するようになる。これこそ本来の株式投資でもある。
株式投資は株式市場で株価の動きを追いかけるものだと思われている。だが、株を買うことは「会社を買う」ことであることを忘れてはいけない。