「ブラック・スワン」という言葉はだいぶ世の中に知られるようになったが、最近は「灰色のサイ(グレー・リノ)」という言葉が目に付くようになった。
草原に生息するサイは、体が大きくて反応も鈍く普段は大人しいが、一端暴れだすと爆発的な破壊力で誰も手を付けられなくなる。このことから、高い確率で存在し、大きな問題を引き起こすにもかかわらず、軽視されがちな事象のことを「灰色のサイ」と呼ぶようになった。
ブラック・スワンが、実際に起きてしまうと深刻な危機を招く、予測不能でありえないような事象なのに対し、灰色のサイは、いずれ危機を招くと予測されているにもかかわらず、今の時点では軽視されて放置されたままの事象という違いがある。
新型コロナウイルスは予測不能で、実際に起きたことで甚大な影響を及ぼした。このことからブラック・スワン的な事象といっていい。
リーマン・ショックもブラック・スワンといわれるが、実際には前兆となる金融機関の破綻があったりして危機に気付いていた人もいる。だから人によってはリーマン・ショックは灰色のサイ的な事象だったともいえるかもしれない。
ブラック・スワンは予測不能だが、灰色のサイは高い確率で存在していていずれ深刻な事態を引き起こすことが予測されている。
目の前にいるにもかかわらず、その存在を軽視してしまっていることというのは身の回りにもある。
できれば灰色のサイが暴れだす前にどこにいるのか把握しておき、暴れだしたらどうするかあらかじめ考えておきたい。だがそれがなかなかできないからこそこんな言葉がある。
さて、この灰色のサイは現在何頭ぐらいいるのだろう。