投資狂日記

自由を追求するブログ

TOB価格と企業価値

ベネフィット・ワンを巡るエムスリーと第一生命の買収合戦は第一生命に軍配が上がった。

エムスリーが提示したTOB価格が1,600円だったのに対し、第一生命は2,123円の提示だったことから結果はほぼ見えていた。

 

ただ、このTOB価格は妥当なのだろうか。エムスリーと第一生命が提示した価格は500円以上の差がある。エムスリーが安すぎたのか、それとも第一生命が高すぎるのか。あるいはどちらも安すぎるのか、それとも高すぎるのか。

 

企業価値をどう測るかは難しい。

もし真実の企業価値というものがあり、それがわかるのならTOB価格にこんな差が生まれるはずがない。

最終的には主観でしかなく、後付けでいろいろ理屈をこねるだけだ。

 

エムスリーからすれば1,600円が妥当と考えたのだろうが、それもエムスリーが負担できる買収金額という足枷がある。だから実際はもっと高い価格を提示したかったのかもしれない。

第一生命も2,123円の価格なら元が取れると考えたのだろうが、実際はもっと低い価格にしたかったのかもしれない。だが買収合戦に負けることを恐れ、高い価格を提示せざるを得ないという側面もあったのではないか。

 

おそらくは買収後に事業のシナジーが十分に発揮されれば買収価格が妥当であったかどうかが事後的にわかるのだろう。ただ、買収価格が高いことはそれだけシナジーのハードルも高くなる。

 

ところでベネフィット・ワンの株主はどう思っているのだろう。

ベネフィット・ワンの株価は2021年11月に6,000円になったものの、その後は1,000円を下回るまでずるずる下落し、結局は第一生命によって2,123円で買収されることになった。高値掴みしていた人は大損だろうし、底値で買っていた人は倍近くの儲けとなる。このまま株式市場に残っていて保有しつづけていたらどうなっていたか。

 

そしてこれは興味深い問いだろう。

すなわち、もし投資するとしたらベネフィット・ワンを買収した第一生命だろうか、それとも買収できなかったエムスリーだろうか。

買収の可否によって今後の企業価値にも影響するとすれば、それを測るのもまたTOB価格と同じように難しい。