東洋経済オンラインに興味深い記事が掲載されていた。
ゴーンの逃亡事件で、「リーダーには人望が必要」と説いてきた教育関係者は内心「まずい」と思っているらしい。
ゴーンの逮捕・逃亡について日産の従業員からは擁護の声は全くないという。これはゴーンに人望が全くないことを示している。だが、ゴーンは瀕死の状態だった日産を立て直したという紛れもない実績がある。
ということは経営者には人望は必要ではなく、能力があればいいということになる。
はたして本当にそうなのだろうか。
この記事の中で、以下のA社長とB社長のどちらのもとで働きたいかという質問がある。
A社長:高潔な人柄で人望があるが、経営手腕が悪く会社の業績は低迷。業務は非効率で、残業が多く、給料は低い。
B社長:私利私欲むき出しで人望はないが、経営手腕がよく業績は好調。業務は効率的で、残業は少なく、給料は高い。
ゴーンはもちろんB社長タイプだ。中高年層はA社長を支持する割合が高いが、若年層はB社長を支持する傾向があるという。
投資家の立場からすれば望ましいのはB社長タイプだろう。業績が良くなければ株価は上がりようがない。
だがこれを長期的な視点で考えてみたらどうだろうか。
ゴーンは確かに実績を出したが、ゴーンが経営陣から追放される際はどうだったか。当初はしがらみがなく思い切ってできていたが、次第にしがらみができて権力維持に腐心したあげく経営陣の対立が表面化し混乱を招いた。このごたごたで業績が落ち込み、株価も低迷することになった。少しでもゴーンに人望があれば、ここまでの混乱には至らなかったのではないのか。
経営危機から立て直すなどの非常時には、ドラスティックに状況を動かすゴーンのような能力者がむしろいいのかもしれないが、長続きする保証はない。
だからB社長タイプというのは能力があるだけに危険な存在だともいえると思う。