「シンギュラリティ」という耳慣れない言葉を目にした。
この言葉を世界的に広めたのはカーツワイルというAIの世界的権威で未来学者だ。シンギュラリティはもともとは「特異点」を意味する言葉で数学や物理学の世界でよく使われる言葉らしい。それがAIの発展に伴いシンギュラリティが「技術的特異点」を意味するようになっている。
このシンギュラリティ(技術的特異点)をAIが人類の頭脳を追い越すポイントと説明しているものが多いが、カーツワイルのいうシンギュラリティはこれとは少し異なるらしい。カーツワイルは「テクノロジーが無限大の速度で進化する」現象が2045年に起こると予想している。
どういうことなのか。
それを理解するうえでエクスポネンシャル(指数関数的)が重要なキーワードとなる。指数関数的というのは言い換えれば「倍々ゲーム」のことだ。数式で表すと、
となる。横軸が時間で縦軸が増加の度合いだとすると時間が経つにつれてカーブが急上昇していく。投資でも複利によって資産が雪だるま式に増えていくのと同じだ。
通常、変化の度合いは現在時点から直線的に考えてしまう。だが、実際にはある時点から急激な変化が現れる。
ヒトゲノム解析を例にとると、7年間で全体の1%しか進捗していなかったにもかかわらずカーツワイルは「もう半分以上が終わっている」と指摘し、実際にその後数年で解析が完了している。これは解析技術が加速度的に進歩したからだ。
このようにテクノロジーが無限大の速度で進化するシンギュラリティが起きた時、この世がどうなるかカーツワイル自身も予測がつかないという。ソフトバンクの孫社長がシンギュラリティを見てみたいと言ったそうだが、確かにそういう状況をみてみたいという興味はある。
今まさに多くのことが変化しつつあるのだろうが、その変化を直線的に考えてしまい影響が出るのはまだまだ先のことだと思っている。だが、実際には気づいた時には大きな変化にいきなり直面することになる。そういう変化をあらかじめ感じていないと変化した環境に適応できなくなるだろう。