この本はなかなか面白かった。
日本企業で不正や不祥事が発生してニュースになることが多くなっている。なぜそのようなことが頻発するのか、その原因の一端を明らかにしている。
料理レシピサイトを運営するクックパッドで創業者と社長が対立した騒動について、創業者の「アート」と経営者の「サイエンス」の戦いという構図だという指摘は、なるほどと唸らせる。
企業の不祥事などはアートよりサイエンスを過度に重視したことが根っこにあるといい、これは東芝の不正会計にまさに当てはまる。無茶な数値目標を与えて現場の尻をたたきひたすら働かせる先にあるものはイカサマしかない。
また、DeNAなどネットベンチャーが「コンプガチャ」や「キュレーションメディア」で社会問題を引き起こした原因は美意識のような内部的規範がないことだという。これらの企業は法律で禁止されていないグレーゾーンを活用している点で共通している。法律に違反していないから大丈夫というグレーゾーンから次第に限りなくクロに染まり、モラルの観点から糾弾されるというパターンだ。
こうした企業に欠けているのが「美意識」であり、価値観や哲学やスタイルともいえる。
さらにオウム真理教と戦略系コンサルティング会社が似ていることを指摘し、DeNAの創業メンバーのほとんどは戦略系コンサル会社出身の「偏差値は高いが美意識が低い人たち」だというのには妙に納得してしまった。
この本はビジネスマン向けに書かれているが、投資家からの目線でも今後の企業の見方にとても参考になる。最近、ESG投資が注目されているが、投資家としても「美意識」を鍛えることは大切かもしれない。