マネーという竜がまた暴れている。
なんらかの重要な経済統計が発表されるたびに大きく反応して市場が動く。
10月の米消費者物価指数(CPI)が公表され、その伸び率が市場予想を下回たことで米利上げの減速期待を膨らませ、急速な金利低下と株高につながった。為替市場では一時1ドル=140円台にまで急速に円高が進んだ。
それにしても振れ幅が大きい。恐怖指数と呼ばれるVIX指数や日経平均ボラティリティー・インデックスの水準が比較的高い状態であることもこれを裏付けている。
経済がどういう状態なのかみんな疑心暗鬼になっていて、なおかついまだに溢れるマネーがその動きによってさらに不透明感を増幅させている。その動きを掴もうとみんな必死になるが、マネーという竜は尻尾を振り回し多くの人をなぎ倒していく。それでも懲りずに立ち向かっていくが、この竜を大人しくさせるのにはどれくらいかかるのだろう。
私は今、ホテルで療養中ということもあってある種部分的に世の中とは隔絶された状態にある。たった一人の部屋で過ごしていると、こうした市場の乱高下がまったく別世界の出来事のように錯覚しそうになる。
小さな窓から外の雲のない青空を眺めていれば穏やかな時間が流れていく。外の世界の狂乱に振り回されない時を過ごせるのはある意味贅沢なことだ。
そうした時間ももうすぐ終わるだろう。
また狂乱の世界に戻されることになる。
いや、正しくは穏やかな世界にいると錯覚していただけに過ぎない。
竜の尻尾に叩き潰されないように、うまく立ち回らないといけない。