株式投資における配当の位置づけにはいろいろな考え方がある。
成長性を重視するなら配当するのではなくすべて内部留保に回し、事業への投資を通じて企業価値を増大させ株価上昇によって投資家に報いるべきとされる。
逆に言えば、成長性がそれほど見込めないのならば配当によって投資家に還元すべきということになる。
ということは、高成長企業の株価はその成長性によって株価が上昇しやすくなり、一方の高配当企業の株価はそれほど上昇は見込めないと考えられる。
では、成長すると思われた企業が実際には期待するほど成長しなかった場合はどうなるか。こうした場合には株価に対して配当が大きな役割を果たす。
高成長企業の業績予想が下方修正されれば1株当たり利益が減少し予想PERの値が切り上がる。その割高になった予想PERが是正される形で株価が下落することになる。
一方、高配当企業の場合も同様に予想PERの値が割高になって株価下落圧力がかかるが、同時に配当利回りが上昇することになる。1株当たり利益が減少しても予想配当に変化がなければ配当利回りの上昇が魅力的となるわけで、これが株価下落の歯止めになる。
配当しない高成長企業ではこうした歯止めがなく、株価の下落も大きくなりがちだ。
こうした現象は私の保有銘柄でも起きている。
私が保有するエーアイテイー株は、第3四半期決算で期末業績予想を下方修正した。その決算発表後、株価は下落したが次第に盛り返してきた。これはやはり配当の影響だと考えられる。エーアイテイーの配当利回りは4%を超えており、業績下方修正でも予想配当には変化がなかった。これが株価を下支えることになっているのだろう。
むろん、業績下方修正と同時に減配となることもあり、その場合は配当による下支え効果は限定的となるだろう。
業績を下方修正した場合に、配当を減らさない企業とそうでない企業の違いはなんなのか。おそらくは財務的な強さやキャッシュフローを生み出すビジネスモデルの根本的な強さではなかろうか。
いずれにしろ、配当が株価の安定装置になりうることを念頭に置いておけば、リスクの取り方も変わってくるのではないかと思う。