かつては「有事の円」と言われ、何か有事が起きるたびに日本円が買われた。だが今では全くその面影はない。一方、同じく有事が起きたときに強い通貨がスイスフランだが、そちらは今でも強いままだ。しかもその強さは主要国通貨の中で圧倒的だ。
1990年以降でみると、先進国の中でスイスは名目GDPの伸びは日本の次に低いが、実質GDPでは米国より成長率が高い。
2000年当時、日本の平均年収は世界2位の水準で、1位はスイスだった。それが今では日本は世界24位にまで落ち込んだが、スイスは1位のままだ。
この背景にもスイスフランの強さがある。
日本円とスイスフランの差はどこから生じたのか。何が違うのか。
スイスも日本も経常黒字国だが、中身が異なっている。
日本は海外子会社からの配当や利子受取で稼ぎ貿易赤字を埋めている。しかしスイスの経常黒字は貿易黒字で成り立っている。しかも貿易黒字は増加傾向にある。スイスフランが圧倒的に強いのに貿易黒字が増えているわけだ。日本では円高になって製造業が海外に出て行ってしまったとされるが、スイスではそうなっていない。
スイスというと高級時計メーカーや製薬会社を思い浮かべるが、その特徴は高付加価値製品に集中していることだ。質を重視し、価値を高めることを追求している。一方の日本は価格を重視したためコストの安い海外へ生産を求め、国内生産では円を弱くすることで輸出競争力を高めようとした。
クオリティの高いスイスとチープな日本。
スイスに学ぶべきことは多いように思えるが、日本では相変わらず通貨を弱くすれば経済が良くなると思われている。だが表面的に経済が良くなったように見えるだけで、本質的には弱体化が進んでいく。
だが、日本企業のすべてがチープな流れになっているわけではない。高い付加価値を生み出し高収益な日本企業も少なからず存在している。そういった企業の株式を買うことがチープな流れに逆らうことにつながるのではなかろうか。