次期首相を決める臨時国会が近く招集されるが、それに向けて各党の駆け引きが行われている。どんな政権になったとしても何らかの経済対策が打たれることになるのだろう。
でもそれで劇的に経済が良くなるわけでもない。
賃上げが物価上昇に追いついていない限り状況は変わらない。
賃上げが思うように進まないのはなぜなのか。
様々な理由が考えられるのだろうが、一つは解雇規制にあるのではないか。
企業の利益は増加しており、その利益から株主への配当も増えている。そうならば従業員の賃上げをしてもいいはずだがそうなっていない。これは従業員への賃上げを一旦してしまうとそれを下げることが難しくなるからだ。
経営者の立場から考えてみればいい。
将来にわたって好業績が続くことが確実なら従業員への賃上げにはさほど抵抗がないはずだ。だが現実はそうではない。業績は不確実であり、そんな状況のなかで業績が落ち込んだ時でも従業員を解雇する規制が厳しく、そのため給料を払い続けることができる財務体質を維持しなければならなくなる。それが余分な資金を抱え込み賃上げをためらわせることになっているのではないか。
こうした構造的な問題を解決することなく補助金などを配ったところで効果は一時的なもので持続しない。
解雇規制の緩和については労働者側から雇用の安定性が失われるという批判がある。だがむしろ安定し過ぎていることが問題なのではないか。労働組合に加入する人が減っているのは加入してもさほど意味がないからで、それが安定し過ぎであることを示している。逆説的だが解雇規制が緩和されることで労働組合を活性化させることにつながるかもしれない。
そしてこうした規制の緩和はお金がかからない。お金を配ることばかり考えて財源の捻出に頭を悩ませるより制度の設計をやり直すほうが安上がりだし効果もあると思うのだが、なぜそうならないのだろう。
政治的なハードルが高いのかもしれないが、そのハードルを越えるようにするのが政治家の仕事のはずだ。でも今の政治家たちは多数派工作することで精一杯なのだろう。