コメ騒動に注目が集まっている中、別のところで不気味な現象が起きている。
5月20日の20年物国債の入札が記録的な不調だったことが報じられた。平均落札価格と最低落札価格の差である「テール」という指標の値が1987年以来の大きさだったという。これを受けて30年物、40年物の利回りも上昇した。
超長期国債の金利が上昇しているということは、その買い手が減っているということだ。すなわち日本政府は超長期国債での資金調達が難しくなりつつあるわけだ。
超長期国債は償還期間が長いためそれだけリスクがある。その分金利が高くなり、投資家の目もシビアになる。30年、40年後に日本政府の財政がどうなっているか気にするのも当然だ。
誰かにお金を貸す時、最も気になるのはちゃんと返済してくれるという信用があるかどうかだ。相手に信用があれば長い間貸していても心配はさほどないだろうが、信用が低ければできるだけ短期間で返してもらいたいと思うものだ。
超長期国債が買われないのも同じ理屈ではないのか。
日本政府が支払い不能になる可能性は小さいだろうが、それでも日本国債を買いたくないという現象が起きることは十分にあり得る。
企業が倒産するのは債務超過になったからではなく、資金繰りに行き詰った時だ。支払い期日に支払う資金を調達できなかったら、いくら利益が黒字であろうが資産があろうが破綻するのだ。財務担当者がキャッシュフローの管理に神経を尖らせるのはそのためだ。政府も同じで、政府が多額の資産を保有しているとしても、ある時点で必要な資金が調達できなかったら破綻するのだ。裏を返せば、いくら債務超過であっても資金調達ができるかぎり破綻はしない。
つまりは日本国債を誰かが買ってくれる限り日本政府は破綻しない。逆に、誰も買おうとしなくなったときに破綻する。唯一の例外は日銀が買い支えるときだ。そのとき日本政府の破綻は回避されるかもしれないが、日銀の信用は地に落ちる。いわば「お前はもう死んでいる」という状態だ。日銀が信用を失うということは円という通貨の信用を失うということだ。結局酷いインフレとなり日本国民は「ひでぶ!」と阿鼻叫喚の嵐となるだろう。
今現在、選挙を前にして消費税減税が議論されている。
減税するかわりに国債を発行すればいいという意見があるが、発行した分だけ必ず買ってもらえるものだと思っているのならそれは傲慢というものだろう。
お金を貸す立場で考えてみたらいい。
会うたびにお金を無心するような輩といつまでも付き合いたいと思う人がいるだろうか。