投資狂日記

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鹿を指して馬と為す

相変わらずトランプ大統領が世界を振り回している。

こうした一連の状況から「鹿を指して馬と為す」という故事を思い出した。それはこんな話だ。

 

秦の始皇帝に仕えていた趙高という臣がいた。趙高は始皇帝の末子である胡亥の守役であったが、晩年の始皇帝の身も周りの雑務をこなして寵愛された。

始皇帝行幸中に死去すると、趙高はその遺言を勝手に書き換えて後継者を太子の扶蘇ではなく末子の胡亥にしようとした。そして宰相の李斯を強引に抱き込み、扶蘇を自害に追い詰め胡亥を皇帝に即位させた。趙高は皇帝の胡亥に代わって政務を取り仕切り実権を握り、皇帝の権威を背景に敵対する有力者をことごとく冤罪で処刑した。

政治は乱れ、民衆の不平不満は高まり各地で反乱が起きた。対応に苦慮した趙高は、皇帝を弑逆する謀反を企て、廷臣のうち自分の味方と敵を判別するため一策を案じた。

趙高は宮中に鹿を曳いてこさせ「珍しい馬が手に入りました」と皇帝に献じた。皇帝は「これは鹿ではないのか」と尋ねたが、趙高が左右の廷臣に「これは馬に相違あるまい?」と聞くと、彼を恐れる者は馬と言い、彼を恐れぬ気骨のある者は鹿と答えた。趙高は後で鹿と答えた者をすべて殺したという。

 

このことから「鹿を指して馬と為す」とは、道理に合わないことを無理に押し通す、または間違いを認めずに押し通すことを意味するようになった。

 

トランプ大統領の関税政策はまさに道理に合わないことを無理やり押し通そうとしている。さらに歳出削減を名目として公務員を大量に解雇しているが、実際はトランプ氏への忠誠心がない者を一掃することを目指している。

驚くべきことにトランプ氏のやっていることは趙高とすごく似ている。

 

かつてドイツの鉄血宰相と呼ばれたビスマルクは「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」と言った。

「愚者」は自分で失敗して初めて失敗の原因に気づき、経験したことからしか学べない。これに対し、「賢者」は自分が経験できないことも先人たちの経験つまり歴史から学び、過去の他人と同じ失敗をしないようにする。

 

趙高はその後どうなったか。

反対者を粛清した後、実際に謀反して胡亥を弑逆し、自ら皇帝に即位しようとした。だが誰も従おうとしなかったので、人望のある子嬰を擁立してすべての責任を胡亥になすりつけて非難をかわそうとした。だが子嬰は趙高を憎悪しており、最終的に子嬰によって殺害された。その子嬰は漢の高祖となる劉邦に降伏し、秦は滅亡した。

趙高は秦帝国を私物化し、敵対者のみならず皇帝をも謀殺し、民衆の反感を買い秦の滅亡の原因になったことから悪臣の象徴として歴史に名を残した。

 

ちなみに「鹿を指して馬と為す」の故事は、一説によると「馬鹿」の語源になったという。