ビジネスの世界では戦略という言葉がよく使われる。経営戦略、競争戦略、マーケティング戦略、財務戦略などなど。でも戦略という言葉を頻繁に使うわりに戦略というものが曖昧だったりする。
その戦略がないかわりに戦術で対応していることが多い。
そもそも戦略とは何か。戦術とは何か。
教科書的にはこう説明される。
戦略は目指す目標や方向性を定めるもの。戦術はその目標を達成するための具体的な方法。
なんとなくわかったようでわからない。計画とその実行とも違う。
もっとわかりやすい表現がある。
「銀河英雄伝説」というSF小説で登場人物が戦略と戦術の違いをこう述べている。
”戦略とは状況を作り出すこと。戦術とは状況を利用すること。”
この言葉のほうがしっくりくる。
日本ではこの状況を作り出すことが下手で、代わりに状況を利用することに秀でている。
状況が良ければそれを利用することで上手くいく。だが、状況が変化してくると状況を利用することに限界がくる。
日本の様々な問題は状況を利用する戦術的な対応が限界にきていて、状況を作り出す戦略が欠けていることにあるのではないか。
水道管の破裂事故もこれまでは現場の戦術的能力のおかげでなんとか対応してきた。だが、インフラの老朽化という課題に対してどうするのかという戦略は見えてこない。
医療制度はどうか。
年金制度はどうか。
政府の財政悪化も目先の戦術的対応を繰り返してきただけで、戦略がないことが今の状況を招いたのではないのか。
ホンダと日産の統合が破綻したのも双方に明確な戦略がないからではないか。そもそも統合というのも戦術的なものにすぎず、その場しのぎというだけだったのかもしれない。
投資においても戦略と戦術の違いを意識しておく必要がある。
銘柄の選択や売買というのは状況を利用した戦術でしかない。
どうしたら投資成果を生み出せる状況を作り出せるかという戦略のほうが肝心となる。
そして、戦術レベルでの勝利は戦略レベルでの失敗を補完しえないのだ。
ちなみに「銀河英雄伝説」はSFだが非常に考えさせられることが多い小説なので読んでおいて損はない。