舞台は江戸時代中期、主人公は蔦屋重三郎というあまりなじみのない人物なだけに期待は薄かった。だがこれは意外と面白いかもと感じた。
蔦屋重三郎は今でいえば出版プロデューサーでありメディア王とも言われる。2025年が放送事業開始から100年の節目であることも関係しているようだ。
どこが興味深いのかというと、まずはメディアという存在をもう一度見直すことにつながるのではないかということだ。昨年は選挙でSNSの影響が非常に大きくなり、一方で既存メディアへの不信とそれによる衰退の兆しが台頭してきた。こうした傾向は一層拡大していくだろうが、メディアがどうあるべきか考えさせられることにつながるかもしれない。
次に江戸中期の経済状況についてだ。田沼意次という人物が再評価されようとしている。これまでは賄賂政治家という印象が強かったが、実際は経済を活性化し文化・芸術を開花させた先進的な政治家として見直されている。経済を活性化させる政策を行った田沼意次に倣い、現代でも活力を呼び起こす経済政策を求める声が大きくなるかもしれない。特に財政拡張を主張する人々にとっては田沼のような政策を望むのではなかろうか。
そしてビジネスの視点だ。出版というビジネスを軌道に乗せていく過程は、現代でも参考になることは多いのではないか。田沼意次がつくりだした自由な空気のもとではビジネスはやり易かった一方で、田沼失脚後に権力者となった松平定信のもとでは逆風にさらされることになる。経済環境にビジネスが左右されるのは今も昔も変わらない。
この大河ドラマがどれくらい注目されることになるかはわからない。
だが今の日本の現状と照らし合わせてみると興味深いところが浮かび上がってきて、今後大きな話題になるかもしれない。