人間には認知バイアスがあって、これが投資においても影響を及ぼす。このバイアスの一つに「保有効果」がある。保有効果とは、自分が所有しているものに対して、他者にとって価値がないものでも高い価値を感じてしまう心理現象をいう。アメリカの経済学者リチャード・H・セイラーが提唱した概念で、人は自分がすでに所有しているものを高く見積もる傾向をもっていることを指摘した。
例えば、長年愛用してきたもので愛着があればどんなにボロボロでも手放したくないと思ってしまうようなことだ。
株式投資においてもこの保有効果というバイアスにかかっていないか気を付ける必要がある。
というのも一旦ある株式を保有すると、保有効果によって高い価値があると感じてしまい、実際はそれほど価値がないにもかかわらず保有し続けて結局損失を被ることになりかねないのだ。過去を振り返ってみれば、実際このバイアスによって損したといえることが結構あるように思える。
とくに長期投資を意識していると一層このバイアスにかかりやすいのではないか。
また、この保有効果はプロスペクト理論とも結びつく。自分が所有したものに価値を感じると手放すことに損失を感じてしまう、損失回避の心理だ。
さらに、価値が減ってしまうリスク回避のために消極的な現状維持という選択をしてしまう現状維持バイアスにも陥ってしまう。
こうした心理状態が行動を妨げることになる。
これは投資行動だけではない。
何かしたいと思っていても行動に移せないのは思考に心理バイアスがかかっていてそれが行動を阻止してしまう。
このバイアスに気付くのはなかなか難しいが、この年末から年越しにかけて一度点検してみるいい機会かもしれない。