今日の日経新聞1面は「増配企業今期4割、過去最高 家計に3.6兆円流入」という記事だった。
上場企業が株主還元に積極的であることを示している。
こうした傾向もあり、配当を重視した投資家も増えているようだ。
ただ増配といってもその質の善し悪しがある。
毎期の利益が右肩上がりで増加し続け、それに伴って配当も増加していくのが最も望ましく健全な形だ。業績が伸び続ける限り株式を保有していれば受け取る配当額は年々増加していく。そして好業績が続けば株価も上昇するだろうからキャピタルゲインも期待できる。まさに質のいい増配であって、長期保有するには理想的といっていい。
では質の悪い増配とはどういったものか。
一つは、減益予想でも増配することだ。利益が減ることが想定されているにもかかわらず配当を増やすということは、過去に蓄積した利益から取り崩すことを意味している。利益はそもそも最終的には株主に帰属するものであるから、過去に蓄積した利益も当然株主のものであり、それが配当として分配されること自体は問題ない。だが極端に言えば、今後も業績が上がらず利益を獲得できないなら、過去に蓄積した利益もやがて枯渇することになる。利益を生み出す力が弱まっているにもかかわらず増配するというのは、先を考えると望ましいとはいえない。
もう一つは、PBRが1倍割れしているため株主還元をして資本効率を高めるための増配だ。確かに資本効率を高めることは必要だが、そのための増配というのは一時的な策でしかない。本来は利益率を高めることなど根本的な対策が必要なはずだが、そうしたことをせず小手先で済ますようなら増配も一時的なもので終わることになる。
こうした増配が多くなるのは、企業の財務基盤が安定しているからでもある。比較的財務に余裕があるからできているだけで、その余裕が失われればもとに戻るだけだ。
増配しているからといって単純に判断すると痛い目に遭う。
重要なのはやはり利益の推移であり、企業が利益を生み出す力を持ち続けているかどうかなのだ。配当が受け取れるのは企業が利益を生み出しているからであり、投資家はそこを見るようにしないといけない。