JAXAの次世代主力ロケットH3が打ち上げ中止になり、それについての記者会見での応酬が話題となっている。
質問した共同通信の記者が「失敗」と決めつけ断定的な物言いをしたことが批判を受けている。
JAXAの技術者からすれば、想定していなかった異常が起きたものの、その異常を検知して健全に止めたのであるから失敗ではないと主張した。
これに対し、共同通信の記者が「それを一般に失敗といいます」と最後に言い放ってしまった。
JAXA側の言い分は素人でも理解できるものだし、ロケットはそのまま残っていて再度チャレンジできるのだから、「失敗」と言い切ってしまうのは乱暴だろう。
そもそも失敗とは何なのか。何をもって失敗となるのだろうか。
「失敗」という言葉を辞書で調べてみると、
物事をやりそこなうこと。方法や目的を誤って良い結果が得られないこと。しくじること。
となっている。
これに沿って考えると、今回のロケット打ち上げはやりそこなった「失敗」といえるようにも思える。だが、方法や目的が誤ったことで良い結果が得られなかったのかというと、そうとも言い切れない。
案外、「失敗とは何か」を突き詰めると難しい。
投資においても失敗はつきものだ。
投資における失敗とは何か。
おそらく損失を被ることだろう。
でも損をしたからといって、それが直ちに失敗といえるものなのかどうか。
会計の世界では「損失」と「費用」は異なる。
収益獲得に貢献した支出が「費用」で、収益獲得に貢献しない支出が「損失」となる。
だからたとえ投資で損したとしても、それが将来の収益獲得に貢献するものであるなら必ずしも「損失」とはいえないのだ。
きっと、ある出来事について失敗かどうかが重要なのではなく、その出来事をどう捉えて次につなげるかが重要なのだろう。
失敗に見えるようなことも、そこから何かを掴み、次に役立てることで失敗でなくなる。何も学ぼうとせずそのまま放置することで本当の「失敗」となる。
だからこそ次の打ち上げには期待したい。
何より一番悔しい思いをしているのは技術者たちだ。打ち上げを楽しみにして見に来ていた子供たちの期待に応えられなかったことを思い、会見で涙を見せた姿を見ても、どれだけ真剣に取り組んでいるかがわかる。
この「失敗」を巡るやりとりで頭に浮かんだのは、中島みゆきの名曲「ファイト!」だった。
”ファイト! 闘う君の唄を
闘わない奴等が笑うだろう
ファイト! 冷たい水の中を
ふるえながらのぼってゆけ”
≪ファイト! 歌詞より抜粋≫