投資狂日記

自由を追求するブログ

財務省という嫌われ役

日銀の金融政策決定会合がある中、財務省が歳出や歳入の見通しを推計する「後年度影響試算」を明らかにした。国債の元利払いに充てる国債費が26年度に29.8兆円と、23年度予算案から4.5兆円ほど膨らむという。そして利払い費の見積もりに使う10年債の想定金利を1.6%と前回試算から引き上げた。国債費は歳出総額の4分の1超まで拡大することになり、必要不可欠な歳出余地が限られていく。

 

国債の利払い負担が財政に与える影響をこのタイミングで示したのに何らかの意図があるのだろう。

これまで低コストで資金調達できた環境は終わりに近づいているのだから、政治家に対して「(国債の)ご利用は計画的に」というメッセージなのかもしれない。

 

借金は返済するのが当然で、期日までに返済しなければ経済的信用を失って誰からも相手にされなくなる。ただ、返済したと同時に借り入れをすれば、未来永劫にわたって実質的に返済しなくて済むではないかと考える人がいる。さらに、政府は貨幣を生み出せるのだから大丈夫だと。

 

借り換えできたとしても前と同様の金利水準とは限らない。以前より金利を上げないと借り換えに応じてもらえなけば金利の負担が増していく。その金利負担の増加分をさらなる借金で賄うとすれば、借金の元金は転がる雪だるまのようにどんどん増えていくことになる。政府の場合はここで貨幣をどんどん発行していくことになる。それで表面上形式的には問題ないようにみえるが、果たしていつまでその貨幣の価値が保たれているのだろう。

 

財務省というのは世間から嫌われる存在でもある。税金を取り立て、歳出を渋るからだろう。私は企業で経理財務部門で仕事をしていたが、営業など稼ぐ部門とは対立しがちで、お金を管理するところはケチくさいと思われているのを肌で感じていた。それと似ている気がする。

 

それでも資金管理を健全にしておかなければいずれ立ち行かなくなる。企業が倒産するのは赤字続きで債務超過になったからではない。資産がいくらあろうと利益が黒字で健全であっても、借金の返済期日に返済できず資金繰りに窮すれば倒産するのだ。だからこそ資金計画を綿密に立て、急な出費にも耐えられるように万全の体制を築こうと神経を尖らせる。

政府の財政はどうか。政府が発行できるのだから資金調達ができずに政府が倒産することはないように思える。確かに倒産しないかもしれないけど、その代わり貨幣の価値は地に落ち、国民の生活は破綻しているだろう。そうならないように健全性を保つため財務省が嫌われ役を引き受けている。

 

四方八方から嫌われる財務省だが、世間に媚びて好かれる存在になろうとした時こそ危機なのかもしれない。