投資狂日記

自由を追求するブログ

株式市場のパッシブ化

株式投資について初心者の間でもインデックス投資が浸透してきている。とくに米国株指数に連動するETF投資信託をとりあえず選んでおけばOKみたいな風潮がある。この傾向が間違っているわけではないが、株式市場全体がパッシブ化していくことに対して複雑な思いがある。

 

パッシブ運用が有効であるとする背景には効率的市場仮説がある。株価には入手可能な情報が全て反映されていて誰も市場を出し抜けず、株価は常に妥当な水準となる。だから銘柄を調査せずともコストが高いアクティブ運用に勝てるというわけだ。

でもこれは、企業を調査し株価に情報を反映させる多数のアクティブ運用者の存在があってこそ成立する。このアクティブ運用者が減ってしまうと株式市場で成立する株価は歪んでしまいかねない。

 

私がパッシブ運用に今一つ気が乗らないのは、個々の企業価値を全く無視しているところにある。パッシブ運用は結局のところ株式市場における株価の集合体であるインデックスという数字の動きしか着目しない。だから個々の企業の開示する決算などの情報には無頓着になるし、そもそも個々の企業が素晴らしい商品やサービスを提供していようが、不正をしていようが関心がない。これで本質的な意味での株式投資といえるのだろうか。

 

株式とはそれを発行する企業の所有権を細分化したものだ。その企業には経営陣と従業員がいて今日も働き商品やサービスを提供しているという実体がある。そしてその成果が集計されて決算という形で情報開示されるが、それにも多大な労力がかかっている。私はかつて経理職だったからその労力がどれくらい大変なものかわかっているつもりだ。だからこそ気になる企業の決算書は丁寧に読み込むようにしている。そこから企業価値を推定し、株式市場での株価と突き合わせることで割安割高を判断して投資の意思決定をする。このように価値と価格のギャップに収益機会を見出すことが投資の本質だと私は考えている。

 

株式市場のパッシブ化が進めば決算書などの情報開示を必要とする投資家も少なくなっていき、企業側もコストと時間をかけて情報開示することの意義について疑問を抱いて開示を渋るようになっていくだろう。四半期情報の開示を廃止しようとする意見が出てくるのもこうした流れの一環なのかもしれない。

ただ、裏を返せばアクティブ投資家に有利な局面ともいえる。株式市場における株価の歪みが生じやすくなり、これは収益機会の増加につながるからだ。