投資狂日記

自由を追求するブログ

【読書記録】「大坂堂島米市場 江戸幕府 VS 市場経済」 高槻泰郎 著

世界で初めて本格的な先物取引がおこなわれたのが大坂の堂島米市場といわれている。今では日経平均先物など様々な先物取引が行われているが、先物取引の発祥が日本であることを知った時、少なからず衝撃を受けたものだ。

現在では一般的な日本人の金融リテラシーが低いとされているが、江戸時代に最先端の先物取引をするほど金融システムが発達したのはどうしてなのか、そして実際にどのようにして取引が行われていたのかに興味をもっていたこともあってこの本を読んだ。

 

江戸時代では米が盛んに取引されていたが、大坂の堂島米市場では「米切手」という証券を通じて米を売買していた。米切手とは、諸大名が大坂で年貢米を売り払う際に発行した、いわば「お米券」だ。この「米切手」を購入して、期限内であればいつでも発行元の大名のところへ行って米俵と交換してもらえることができた。重い米俵で取引するのは面倒だから自然とそうなったのだろう。

この「米切手」のすべてがすぐに米俵と交換要求されるわけではないことから、諸大名は蔵にある在庫米の量以上に「米切手」を発行して資金調達をすることが常態化した。さらに、米を持たなくても思惑次第でこれを売り、米を入れておく蔵がなくても思惑次第で米を買うことができる「帳合米商い」があった。これが先物取引というわけだ。

 

こうして米の市場経済が発達したわけだが、過剰に米切手を発行してしまう大名も出てくる。すると米俵の交換に応じられず、取り付け騒ぎのようなことも発生してしまうことになる。また、米価格の動向は江戸幕府の財政にも影響するので米市場での取引が円滑に行われることが江戸幕府にとっても重要だった。市場をめぐる江戸幕府の役人と商人の駆け引きもすごく興味深い。

 

この堂島米市場を舞台とした江戸幕府・大名・商人たちの姿を思い浮かべると江戸時代の市場経済が現在とそれほど変わっていないことに驚く。そして現代の日本人もそのしたたかさを見習わないといけないだろう。