FIERという言葉がこれだけ世間一般に広まったことに驚く。それだけ働くことに嫌気がさしている人が多いということなのだろう。
FIREは「Financial Independence, Retire Early」のことだが、感覚的には「Retire Early」が強調されているような気がする。だからアーリーリタイアしても何もすることがなくて結局何かしら仕事をすることになるから、FIREなんて無意味だという意見も出てくる。
だが重要なのはアーリーリタイアすることではなくて、「Financial Independence」すなわち経済的に自立することにある。アーリーリタイアするかしないかだけではなく、何をするか、あるいは何をしなくて済むかを経済的観点から決めることができる自由を手にすることこそが重要なのだ。
「Financial Independence」という言葉は前からあった。だが略して「FI」だけでは何のことかわからないため、後ろに「Retire Early」を付けることで「FIRE」(火)という単語に別の意味を持たせたのだろう。でもそれによって、アーリーリタイアするために経済的自立を目指ざすというようなことになってしまった。そして悠々自適のリッチな生活ができるほどの資産をできるだけ早く築くというイメージになっている。贅沢な生活をしたいとなるとそれだけハードルは高くなる。
だが本来の目的は自分の望む生き方をするためにできるだけ経済的制約をなくすということだ。アーリーリタイアが本当に望むことなのかはじっくり考えないといけない。
ベーシックインカムの導入を巡っても似たような議論がある。
ベーシックインカムを導入したらみんな働かなくなるのではないかという懸念だ。だがベーシックインカムは生活するのに必要な最低限の収入でしかなく、余裕のある生活をしたければ働くなどして別の収入源を確保しなければならない。ただ、最低限の収入があるおかげで、嫌だった仕事を辞めて別の方向を模索する可能性が生まれる意義は大きい。
そういう意味でベーシックインカムは「国民皆FI」と言えるかもしれない。最低限とはいえ、一定の収入が保障されたとしたらどう生き方が変化するのだろう。FIREという考え方も廃れていくのだろうか。