投資狂日記

自由を追求するブログ

【読書記録】「THINK AGAIN  発想を変える、思い込みを手放す」 アダム・グラント著

一般的には信念を持つことは大事とされる。軸がブレない思考の下では行動も一貫したものとなり、それが信頼にもつながる。

だが、その信念がただの思い込みに過ぎないということもある。

 

投資で失敗するときは大抵この思い込みに陥っている。

この本は、そうした思い込みに陥らず柔軟に発想を変える、すなわち「再考」の大切さを説いている。

 

この本を読んでいるとき、安倍元首相の銃撃事件が発生した。

報道によれば、この事件の容疑者の母親が宗教にのめり込み多額の献金によって家庭が崩壊したことへの恨みが根底にあるという。

母親の信仰という思い込みが遠因となり、また事件を起こした容疑者も恨みからくる思い込みによって凶行に至った。もし、悲惨な結果を招く前に「再考」する柔軟性があったらこの事件は起きなかったかもしれない。

それだけいったん既存の考え方をしてしまうと新たな観点から見つめ直すことが難しいということでもある。

 

著者によれば、誰もが「牧師」「検察官」「政治家」という3つの思考モードがあるという。

牧師モードでは、自分の信念を形成し、それを確固たるものにしようと他人に説教する。

検察官モードでは、他者の思考や主張の矛盾を指摘し、間違いを明らかにするための論拠を並べる。

政治家モードでは、自分の考えに対する他者の支持を獲得しようとキャンペーンを行う。

これらの思考モードのもとでは、自分の信念を貫くこと、他人の過ちを指摘すること、多くの支持を獲得することに没頭するあまり、自分の見解が間違っているかもしれないなどと再考しなくなるという潜在的な危険性がある。

よくメディアなどに登場している強気な態度の学者や評論家には、自説が正しいと声高に主張し他者の意見を見下してバカにするような態度の者がいるが、自分が間違っているかもしれない可能性については考えもしないのだろう。

 

著者はこうした3つの思考モードに代わり、「科学者」の思考モードが重要であるという。

科学者は自分の知っていることを疑い、知らないことを深堀する力が要求される。仮説を立て実験し結果を検証するのは真実を追求するためだ。こうした科学者モードによって思考に柔軟性をもたらすことができるという。

 

自分自身には「再考」する柔軟性があるだろうか。

あると言い切れるほどの自信はない。

知的柔軟性には謙虚さがいる。

そして「再考」が難しいのはこの謙虚さを保つことが難しいからでもある。