ソニーとホンダが電気自動車(EV)で提携した。
これには驚きもあるし、何か新しいことが起きそうな期待もあるし、上手く行くのかという不安もあり、何とも複雑な気分になった。
ソニーもホンダも日本企業としては珍しく個性的な存在でもある。その両社がどんなEVを世に送り出すのかは非常に興味深い。
是非とも「EVとは何か」という本質的なところから突き詰めていってほしい。
日本企業には本質を突き詰めようとすることが少ない。品質とか性能を突き詰めたりはするが、それがなぜ必要なのか、それにどういう意味や意義があるのか、企業理念とどう結びつくのかなどを突き詰めているとは思えない。そしてそれが日本企業の競争力衰退につながっているのではないか。
アップルやグーグルには企業内哲学者がいるという。その哲学者によって企業の世界観やビジョンが製品やサービスに反映されている。GAFAがこれだけ強いのはビジネスモデルだけではなく哲学的な思考によって本質を突き詰めているからこそなのではないか。
一方、日本企業はどうか。
システム障害を何度も起こしたみずほ銀行は、金融庁に「言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない」とこき下ろされる始末だ。システムのあり方について本質的な議論をせず、顧客そっちのけで社内の派閥力学がもたらした結果がこの様だ。
だが日本企業の多くは実は同じなのではないのか。
ある社員が本質的な問いを発したとしても、「そんなこと言ってないで目の前の仕事しろ」と言われる。「なぜ」「どうして」と考えることが許されない。結局、言われたことしかやらなくなり、魅力的な商品やサービスは生まれず、何かピントがズレたものばかりとなる。一時的には利益が出ても長続きせず消えていく。理念とかビジョンは形式的なもので美しい言葉で書かれたお飾りでしかない。
もちろんすべての日本企業がそうとは限らない。ソニーもホンダも創業者の強烈な理念を追求してきた企業だ。その点、ソニーとホンダが混ざることによって何か化学反応が起きることは期待できる。双方の社員間で激論が交わされることになるはずだ。その影響が他の産業にも波及していくこともありうる。
今後、この2社の提携が生み出すものに期待したい。