NHK大河ドラマや新1万円札の図柄に採用されたことで渋沢栄一が注目を集めている。その渋沢栄一を主人公にした小説「雄気堂々(上)(下)」を読んだ。
渋沢栄一は日本資本主義の父といわれるほど様々な企業の設立に関与し産業の礎を築いた偉大な人物だ。それほどの大きな実績をなぜ残せたのかということに興味があった。
農民に生まれながら、多くの書物を読み世の中の矛盾に敏感であったこと。
尊皇攘夷という思想に傾倒するもその限界に気づき方向転換できる柔軟さ。
機が熟するまで待つことができ、無駄に敵を作らない性格。
そして何より巡ってくるチャンスを逃さないことにある。
一橋慶喜の家臣になったことでヨーロッパに随行する機会が巡ってきた時も、学べるものをとことん学んだことが後に活きた。明治維新後はなるつもりのなかった役人になったことで国の財政に関わり、民間の力がもっと必要なことに気づき多くの会社設立に関わることになった。
運が良かったこともあるが、動乱のなかで有能な人物が次々に命を落としていくなか生き残って活躍できたのは視野の広さと思考の柔軟性のおかげではなかろうか。
時代がこういう人物を生み出すものなのだろうか。歴史を考えるとき、いつも疑問に思う。そして今の時代にもこういう人物は現れうるのかということも。