政府が減収世帯に30万円給付することを撤回して国民1人当たり10万円給付することに方針転換し、緊急事態宣言を全国に拡大したことが波紋を呼んでいる。
今回の新型コロナウイルスについては、難しい選択が迫られている。
感染拡大を防止するためには人の活動を制限する必要があるが、そのために経済が止まり生活に甚大な影響が出る。一方、普通に生活して経済を回そうとすれば感染拡大がいつまでも終息せず、死亡者がどんどん増え続ける。
感染拡大防止か経済か。
一方を選べば他方が成り立たなくなるトレードオフの関係だが、どちらかを選択しなければならない。
だが、選択肢としては感染拡大防止を取らざるを得ない。
感染者が莫大に増加して医療が崩壊し死者があちこちに蔓延するようになってしまっては社会が機能しなくなり、いずれ生活もままならなくなる。ならば一時的に経済を犠牲にしてでも感染を終息させるしかないのだ。
そして、経済の犠牲といっても人によって許容量は異なる。
経済の犠牲が許容量を超えている人が多ければ多いほど感染拡大防止への力が弱まり、それだけ感染の終息が遠のき、さらに経済が犠牲になってますます生活が苦しくなる。
この悪循環を止めるために犠牲の許容量をかさ上げする現金給付は有効だろう。でも早くしないと意味がない。感染が広まり経済の制限が続けば生活が苦しくなる国民は増え続け、遅れれば遅れるほど10万円では足らなくなる。
いや、今のスピード感のままなら追加の給付をせざるを得なくなるのではなかろうか。
1人10万円でも単純計算で約12兆円必要だが、さらなる給付が必要になったら財政悪化に拍車がかかる。
あとは野となれ山となれで、ずるずるとやらざるを得ない方向へと追い込まれていく。
政府は日銀を財布代わりに使い、日銀はせっせと紙幣を刷り続ける。どうやらこれが現代の錬金術らしい。
日本は何度も行き着くところまで行ってしまった歴史を持つ。
江戸幕府時代の鎖国政策から明治維新で開国へ一気に突き進んだ。
富国強兵のもと日清・日露戦争で勝利したのち軍国主義に突き進み太平洋戦争敗戦で焼け野原となった。
戦後は経済復興に突き進み、やがてバブル経済が崩壊した。
そして経済立て直しと景気回復を目指し、気付けば国債発行がとんでもなく増加している。
また行き着くところまで行ってしまうのか。
次に行き着くところは膨大な国債発行による財政破綻かハイパーインフレか。
その前に新型コロナウイルスの感染による死者数が行き着くところまで行ってしまうのか。
いずれにしろ重大局面の真っ只中にいることは確かだ。