サラリーマンのときはずっと経理の仕事をしていた。経理というのは会社の財務状況を熟知している。同時に会社の機密事項のようなものだから安易にベラベラしゃべることはない。だが会社の財務諸表を見ていると、資本主義というものを生々しく感じたものだった。
勤務していた会社はオーナー企業で創業者一族が役員の大部分を構成していた。といっても役員は取締役と監査役を合わせても10人に満たない少数だ。一方従業員は何百人という規模だった。少数の役員への役員報酬と多数の従業員への給与の金額を単純に一人当たりで計算してみて愕然とする。役員と従業員では1桁違った。
また、オーナー一族は株主でもあるから純利益の一部が配当として支払われる。高額の役員報酬に加え配当金もあるわけだから、従業員との差は歴然なわけだ。
こういう話をすると、おそらく2つの反応がある。
一つは、従業員への給料をもっと上げろというものだ。もう一つは、リスクをとった結果だから当然だという立場だ。
このオーナー一族は初めからこんな高額の報酬を得ていたわけではない。創業時には銀行に頭を下げて資金調達し、事業を軌道に乗せるく現場の先頭に立ってきた。一歩間違えば財産をすべて失い路頭に迷うことになっていたかもしれない。そういうリスクをとった結果として高額報酬や配当を受け取っている。
リターンが欲しいのならリスクをとらないといけないのだと、会社の損益計算書を見て確信した。リスクをとらないのならリターンもそれなりにしかならない。
投資を始めたのには、こういう資本主義の生々しさを感じたことにある。