近所に野良猫がいる。しかも複数だ。たまにその野良猫たちが夜ケンカしていて結構大きな鳴き声が聞こえたりする。
サラリーマンとして働いていたころ、朝にその野良猫を見て羨ましく思っていた。
昨日、「幸福感を失わせるものは他人との比較だ」と書いたが、他人どころか野良猫と比較していたのだ。
野良猫は日の当たる暖かい場所であくびをしながらのんびり寝転んでいる。通勤電車に乗るわけでもなく、くだらない会議があるわけでもなく、TO DOリストがあるわけでもなく、嫌な奴の相手をする必要もなく、残業することもなく、収入も気にする必要がない。
それに対して自分、ひいては人間はどうなのだ、と。
人間は高度な知能があり、生活は便利であるにもかかわらず、あらゆることにがんじがらめで窮屈だ。野良猫と目が合ったら、「あんたらなにしてんねん」と言われている気がした。深刻に思っていたことがバカバカしくなる。
野良猫は自由だ。いつなにをしてもいい。その代わり自分の身に起きたことはすべて受け入れなければならない。食べ物がないかもしれないし、居場所を追い払われるかもしれないし、車に轢かれるかもしれないし、病気で野垂れ死にするかもしれない。今日のんびり寝転んでいても明日には命がないかもしれない。
それでも野良猫の自由を羨む。
それは今でも変わらないけど、羨む度合いは減っている。