W杯で日本代表がコロンビア代表に勝ったことは世界を驚かせた。事前の予想では最も期待が低かったのだからなおさらだ。
この勝利には試合序盤で日本がPKを得た上に反則した選手が退場となるという出来事が大きく影響している。これは幸運といっていい。しかも願ってもそうそうない大きな幸運だ。
だが巡ってきた幸運をうまくつかむかどうかは別問題だ。日本代表は幸運をつかんだものの一時はそれを手放しそうになった。それを再び引き戻し勝利をつかみとったのだから十分称賛に値する。
さて、この勝利を呼び込んだ西野監督は運がいい人のように思える。運だけで結果がついてくるわけではないが勝負には運がつきもので、リーダーには運が必要なのだ。
西野監督はアトランタ五輪で日本代表を率いていた時も優勝候補筆頭だったブラジルを破っている。このときも相手ゴールキーパーとディフェンダーが連携不足でぶつかり合い、こぼれてきたボールを無人のゴールに押し込んだという幸運なものだった。ただ相手の連携不足であることが弱点であることを把握していて、西野監督がそこをつくように選手には指示していた。事前の準備があってこそあの運が巡ってきたともいえる。
不運な名将というのは存在せず、名将と言われる人はみな運がいいと司馬遼太郎は「坂の上の雲」で書いている。日本海海戦でロシアのバルチック艦隊を破った東郷平八郎も運がいい人だったという。
このW杯で日本代表がグループリーグ突破にひとつ前進したことは確かだが、まだ道のりは険しい。アトランタ五輪でブラジルを破ったときもグループ予選で2勝したにもかかわらず突破できなかった。この点でいうと西野監督は運がなかったともいえるのだ。
今回はどうなるのだろう。
運を頼ってはいけないけど、物事には運がつきまとう以上運がいいことに越したことはない。